Rustでも文字数をカウントしたい
はじめに
後輩にUnicodeを熱く語ったら引かれました。どうも弊社です
今まで結構Rustのコードを書いていましたが、そういえば日本語周りの挙動を確認していなかったなということで確認してみます。
前提知識
この辺はドキュメントに書いてあるので割と周知な内容なんじゃないかなという所ですが、Rustは内部的には文字列はUTF-8で扱っています。
背景は調べてないので知りません。 多分JSONのシリアライズ・デシリアライズとかで変換コストが減るとか、メモリ消費量を減らしたいとかなんとかじゃないでしょうか。
文字数カウント
String
にはpub fn len(&self) -> usize
なメソッドが生えていますが、このメソッドはバイト数を返してきます。 Rustのドキュメントは文字はUTF-8であることをしつこいくらい書いているので、納得できる挙動ではあります。
が、我々日本人は漢字を使わないといけない為、それでは困るわけです。
そこで、pub fn chars(&self) -> Chars<'_>
なメソッドを呼び出してchar
のイテレータを取得し、その数を数えれば文字数をカウント出来ます。
let a = String::from("Hello World");
let b = String::from("こんにちは");
println!("{} {} {}", a, a.len(), a.chars().count());
println!("{} {} {}", b, b.len(), b.chars().count());
Hello World 11 11
こんにちは 15 5
本当にそれでいいの?
ここまでの説明で、「a.chars().count()
を呼び出せばいいのね!」と納得して帰る人は文字コードの怖さを知らない人です。 Unicode規格票で素振りを1000回やってから出直してきてください。
上の文をもう一度読んでみましょう。
pub fn chars(&self) -> Chars<'_>
なメソッドを呼び出してchar
のイテレータを取得し、
そうです。このメソッドはchar
、すなわちコードポイントのイテレータを返すに過ぎないわけです。
この方法だと「は(U+306F)」+「゜(U+309A)」で表現される「ぱ」は容赦なく2文字としてカウントされます。
let a = vec!['は', '\u{309A}'];
let a: String = a.iter().collect();
println!("{} {} {}", a, a.len(), a.chars().count());
ぱ 6 2
ソフトウェアエンジニア相手なら「内部的には2文字なんですよ~」と言えばいいだけ?ですが、一般人にそんなことを言っても「何言ってんだこいつ」となるだけです。
Unicode正規化
しかし、我々にはアクセント記号などを分解後再結合できるUnicode正規化という法具が存在します。
が、Rustの標準ライブラリに入ってません。 unicode-normalizationを使うしかなさそうです。
[dependencies]
unicode-normalization = "0.1"
fn test(value: &Vec<char>) {
use unicode_normalization::UnicodeNormalization as _;
let str: String = value.iter().collect();
println!("{} {} {}", str, str.len(), str.chars().count());
let str = str.nfc().to_string();
println!("{} {} {}", str, str.len(), str.chars().count());
}
let a = vec!['は', '\u{309A}'];
test(&a);
ぱ 6 2
ぱ 3 1
しかし、結合後の文字が収録されていない文字はやはりだめです。
let a = vec!['か', '\u{309A}'];
test(&a);
か゚ 6 2
か゚ 6 2
Unicodeテキストセグメンテーション
そこで、Unicode® Standard Annex #29 UNICODE TEXT SEGMENTATIONの出番です。
こいつでGrapheme Cluster Boundaries(書記素単位)でぶった切ってやればいいのです。
同じunicode-rsグループが開発しているunicode-segmentationクレートを使用します。
[dependencies]
unicode-segmentation = "1"
fn test(value: &Vec<char>) {
use unicode_normalization::UnicodeNormalization as _;
use unicode_segmentation::UnicodeSegmentation as _;
let str: String = value.iter().collect();
println!("{} {} {}", str, str.len(), str.chars().count());
let str = str.nfc().to_string();
println!("{} {} {}", str, str.len(), str.chars().count());
let g = str.graphemes(true).collect::<Vec<&str>>();
println!("{} {} {}", str, str.len(), g.len());
}
let a = vec!['か', '\u{309A}'];
test(&a);
か゚ 6 2
か゚ 6 2
か゚ 6 1
なしとげました
これならみんな大好きIVSも正しくカウントできます。
let a = vec!['\u{8FBB}', '\u{E0100}'];
test(&a);
辻󠄀 7 2
辻󠄀 7 2
辻󠄀 7 1
let a = vec!['\u{1F385}', '\u{1F3FF}'];
test(&a);
🎅🏿 8 2
🎅🏿 8 2
🎅🏿 8 1
おわりに
文字コードを舐めると死にます